広告の84%はムダなのに、なぜ止めると売上が落ちるのか | 思考の構造
なぜ止めると売上が落ちるのか
広告の多くは、実はきちんと記憶されていません。
テレビCMを見た人のうち、ブランド名まで覚えているのは全体の16%程度。
言い換えれば、約84%の広告はブランド認知につながっていない可能性があります。
この数字だけを見ると、「広告なんてほとんど無駄では?」と感じてしまいます。
でも、広告を止めると長期的に売上が落ちていく。
この矛盾を、どう理解すればいいのでしょうか。
今日は、この「かみ合わなさ」の構造を整理していきます。
まず「広告はムダに見える」という感覚は、否定できません。
テレビ視聴者のうち、放映されたCM自体を覚えているのは約40%。
さらにブランド名まで結びついて記憶されているのは、全体の16%程度という研究があります。
つまり、CMは「見られているかもしれない」。
でも「ブランドとして回収されている」かどうかは、まったく別の話です。
面白い広告だったとしても、それが商品やブランド名と結びついていなければ、売上資産にはなりにくい。
多くの人は、「広告を出せば自然にブランドが認識される」と思っています。
でも実際は、「見た」と「ブランドまで記憶した」のあいだには、大きな距離があります。
広告の問題は、"届いていないこと"だけではありません。
"ブランドとして回収されていないこと"にもあります。
広告を止めても、最初の数週間は売上にほとんど変化が出ません。
だから、「やっぱり広告は不要だった」と判断してしまいがちです。
ところが、8週間、12週間と経つにつれ、差が広がり始めます。
広告を流している地域と流していない地域で、最終的には売上に大きな差が生まれた研究があります。
なぜ、こういうことが起きるのでしょうか。
それは、広告が「今すぐ売る装置」だけではないからです。
売上が落ちていくのを防いでいる側面がある。
広告には、思い出してもらう土台を維持する役割があります。
ずっと存在している印象を保つ役割があります。
ちゃんとした会社だという安心感を与え続ける役割があります。
広告は、攻めであると同時に、防御でもあります。
言い換えれば、「思い出してもらう権利」を維持しているのです。
多くの人は、広告を「見た瞬間に反応を取るもの」と捉えています。
でも、現実の購買はそんなに単純ではありません。
人は広告を見てその場ですぐ買うとは限らない。
むしろ後で必要になった時に「何となく思い出せること」の方が、購買につながることが多い。
さらに、広告には「この会社はちゃんと存在している」という安心感を与え続ける役割もあります。
整理すると、広告が担っているのは次のようなことです。
広告は、その場で買わせるものというより、
将来の選択肢から外れないための活動でもあるのです。
これは企業広告だけの話ではありません。
個人の情報発信でも、発信が止まると「忘れられる」という現象は同じように起きます。
投稿そのものが売上を生まなくても、「この人まだ動いているな」という安心感が、長期的な信頼につながっていきます。
もうひとつ、崩しておきたい誤解があります。
「とにかく話題になれば勝ち」という考え方です。
ネット上でパロディが作られるほど話題になったCMシリーズがあったにもかかわらず、売上が減少したという事例があります。
面白さや話題性はあった。
でも、それが「商品を欲しい」という気持ちに結びついていなかったのです。
バズる広告は、認知の面では強そうに見えます。
でも、面白いことと売れることは同じではありません。
ここで分けて考えなければならないのは、次の2つです。
「広告が記憶されたのか」
「商品やブランドが選ばれる理由として残ったのか」
この2つは、まったく別のことです。
買う理由と結びついた時に、買います。
注目されることと、選ばれることは違います。
再生数があることと、売上につながることも別です。
SNSでの発信も、同じ構造を持っています。
面白い投稿が伸びても、「何をしている人か」がわからなければ、仕事にはつながりにくい。
逆に、派手にバズらなくても、必要な人に「思い出される位置」を取れていれば
長期的には強いのです。
広告は、その瞬間に全部を回収するものではありません。
だからこそ、短期の数字だけで切ってしまうと危ない。
そして、ここまで整理すると、次の問いが浮かんできます。
「忘れられないだけで十分なのか」
「本当に売上につながる広告は、何を作っているのか」
広告は、派手に効くから価値があるのではありません。
忘れられないように、静かに効いているから価値があります。
次回は、「どんな時に思い出されるかが、売上を決める」という仕組みを見ていきます。
必要な場面で思い出したものを買う。
次回は、この「思い出される仕組み」を見ていきます。
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