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人は好きだから買うのではない。思い出したものを買う

 

人は好きだから買うのではない。思い出したものを買う。 | 思考の構造
MARKETING / COMMUNICATION
人は好きだから買うのではない。
思い出したものを買う。
佐竹 正宏|思考の構造

前回は、広告の約84%はブランド認知につながっていない
という話をしました。

それでも広告を止めると、じわじわと売上差が広がっていく。
広告には「忘れられないようにする」役割がある、というところまで整理しました。

では、忘れられなければ十分なのでしょうか。

ただ覚えてもらえば売れるのか。
好かれれば選ばれるのか。

今日は、そこからもう一段深い話に入ります。


1.好感度は、なぜ決定打にならないのか

マーケティングの世界では、
「好感度」
「ブランドイメージ」
「世界観」
がよく語られます。

もちろん、これらに意味がないわけではありません。
ただ、売上に近いところで考えると、それだけでは弱い。

なぜかというと、人は好感を持っていても、
必要な時に思い出せなければ買わないからです。

逆に、強い愛着がなくても、ある場面と結びついていれば買うことはあります。

「好き」と「買う」は、思っているほど直結していません。

好きであることと、選ぶことは同じではありません。
印象の良さは、選択肢に残る条件のひとつであっても、
決定打とは限りません。

商品やサービスが選ばれるには、「好かれていること」より
「思い出されること」の方が先に来る場合があります。

2.好感は、馴染みの後から育つ

少し考えてみてください。

自分のお母さんのことを好きなのは、なぜでしょうか。

好感度を比較して選んだからではありませんよね。

最初に接触があり、一緒にいる時間があり、
馴染みが積み上がった結果として、好きになっている。

商品も、同じ構造を持っていることがあります。

「好きだから使う」のではなく、「何度か使ったから好きになった」。
「選んでから愛着が生まれた」という順番です。

つまり、好感度は"先にある原因"ではなく、"後から育つ結果"であることも多い。

人は、好きだから近づくこともありますが、
近いから好きになることもあります。

だとすると、最初から「好きにさせよう」と力を入れるより、
「思い出される接点を増やす」方が、現実的な場合があります。

3.売上を決めるのは、場面との結びつきです

では、本当に売上に直結するのは何でしょうか。

研究によれば、売上に直結するのは「特定の悩みやシチュエーションから、その商品が連想される数の多さ」です。

購買は、真空の中では起きません。
人は必ず、何かの状況の中で買います。

喉が渇いた。
疲れた。
急いでいる。
本を処分したい。
バイトを探している。

こうした「場面」の中で、候補として頭に浮かぶかどうかが重要です。

強いブランドは、多くの場面に入り込んでいます。

強いブランドの例
喉が渇いた時 → コーラ
本を売りたい時 → ブックオフ
バイトを探したい時 → インディード

強いブランドは、「場面とワンセット」で記憶されています。

逆に弱いブランドは、存在を知っていても、どの場面で使うのかが曖昧です。

ブランドが強いとは、人気があることだけではありません。
その状況が来た時に、候補に入ることが強さです。

4.「○○な時はこのブランド」という回路

心理学に「If-Thenプランニング」という考え方があります。

「もし〜なら、〜する」という条件付けが、
行動を自動化するという研究です。

これは購買でも同じことが起きています。

もし本を売りたいなら、ブックオフ。
もしバイトを探したいなら、インディード。
もし喉が渇いたなら、コーラ。

この「もし〜なら〜」が脳内で自動化されているほど、そのブランドは強い。

人は毎回じっくり比較して選んでいるようで、実際にはかなりの部分を「想起」で選んでいます。

広告とは、説得というより「条件反射の設計」に近い面があります。
強いブランドは、状況が来た瞬間に呼び出されます。

最強の広告戦略とは、
「○○な時はこのブランド」を消費者の頭の中に作る
ことです。

5.これは、個人の発信にも同じことが言えます

ここまでは企業広告の話として整理してきましたが、構造はまったく同じです。

SNSで再生数やいいねが多くても、「何の人か」が結びついていなければ仕事にはつながりにくい。

面白い投稿を続けても、
「どんな時にこの人を思い出すのか」
が曖昧なままでは積み上がりません。

大事なのは、「どういう時にこの人を思い出すか」という結びつきです。

行動が止まった時に思い出す人。
事業の方向がブレた時に思い出す人。
一人で考えて詰まった時に思い出す場。

こういう結びつきがある発信は、派手にバズらなくても強い。

面白い人で終わるのか、
必要な時に思い出される人になるのかで、
結果は変わります。

認知されることと、相談されることのあいだには距離があります。
その距離を埋めるのが、「どんな時に思い出されるか」の設計です。


まとめ
TODAY'S POINT
好感度は購買の決定打ではない——「思い出されること」の方が先に来る場合がある
好感は、馴染みや接点の結果として育つことが多い
売上を決めるのは、場面との結びつきの数
「○○な時はこのブランド」という回路が、広告にも発信にも重要

自分の発信やサービスが「何の時に思い出されるのか」、一度整理してみてください。

一人で考えていると、意外と見えにくいところでもあります。

構造から整理する場があると、見え方はかなり変わります。

売れるものは、ただ好かれているものではない。
必要な瞬間に、頭の中へ呼び出されるものである。
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