なぜ「かっこいいブランディング」は売上につながらないのか | 思考の構造
売上につながらないのか
50億円以上かけてパッケージをおしゃれにしたのに、
売上が20%落ちたジュースがあります。
しかも、短期間で元のデザインに戻しました。
ブランディングって、本当に「かっこよくすること」なのでしょうか。
今日は「ブランドは大事か否か」の話ではありません。
「ブランドの何を効果だと見なすべきか」を整理する回です。
研究・データ・失敗事例をもとに、ブランドの「キラキラした神話」を一度壊してみます。
「マクドナルドのマークがあると、子どもは同じ食べ物でもより美味しいと感じる」
こういった話は、ブランド効果の象徴としてよく語られます。
ロゴを付けた瞬間に味まで変わる。
ブランドは人の判断を魔法のように変える。
でも、ここには慎重になる必要があります。
食品研究で多数の論文を発表していたブライアン・ワンシンクの研究は、
後年になって多くが撤回されました。
実験設計の問題や、データの扱い方への疑義が相次いで指摘されたためです。
「ブランドが人の認知をここまで変える」という話の多くは実験室の中の話であり、
現実の市場でそのまま通用するかどうかは別の問題です。
ブランドは魔法の粉のように語られがちです。
でも、現実の売り場はそんなに単純ではありません。
ブランド効果の過大評価は、経営判断を歪める。
「ブランドがあれば高くても売れる」
「ファンがいれば価格競争から逃げられる」
「一度好きになったら永遠に買い続ける」
これらは、どこまで本当なのでしょうか。
1996年、エル・バルディンガーは65種類のブランドを3年半にわたって調査しました。
結果は、
ブランド差がそのまま顧客維持の大差に直結するとは言い切れない
というものでした。
1997年、ハミルトンは442商品を対象に調査を行いました。
ここでも、ブランディングが価格弾力性を明確に弱めるという証拠は見つかりませんでした。
Ehrenberg-Bass Instituteのバイロン・シャープは、『ブランディングの科学』の中で、
ブランドの役割は思われているより泥臭い、という視点を示しています。
これらが言っているのは「ブランドは不要だ」ということではありません。
「効き方を勘違いしている」ということです。
一度好きになったら永遠に買い続ける、という恋愛みたいな話ではないのです。
では、こうした誤解は実際にどんな失敗を生むのでしょうか。
トロピカーナのケース。
旧パッケージは「オレンジにストローが刺さった」デザインで、
棚で一瞬見ただけで「100%オレンジジュース」だと伝わりました。
2008年前後のリニューアルで、そのデザインを洗練されたものに変更しました。
確かにおしゃれになった。でも、何の商品か瞬時に伝わりにくくなった。
結果として売上が大きく落ち、短期間で元のデザインに戻しました。
ローソンPBのケース。
2020年のパッケージ刷新では、ローマ字中心のミニマルなデザインを採用しました。
洗練はされましたが、売り場で中身の判別がしにくくなった。
読めばわかるが、見ただけではつかみにくい。
立ち止まって解読しないといけない、という状態になりました。
2つの事例に共通しているのは、問題が「センスの良し悪し」ではないということです。
売り場での識別性を壊したことが、失敗の本質でした。
ダサいほうがいい、と言いたいわけではありません。
識別しやすいほうがいい、ということです。
売り場では、芸術作品の審査はされません。
0.5秒で何かわかるかが勝負です。
おしゃれな名刺は作れても、棚で勝てるとは限らない。
ブランドは作品ではなく、まず案内標識に近いものです。
あなたのブランド施策は、好きになってもらうことばかり考えていないでしょうか。
お客さんが棚やスマホを見た瞬間、ちゃんと見つけてもらえる設計になっているでしょうか。
センスを足すことで、逆に何の商品かわかりにくくしていないでしょうか。
ブランドは「かっこつけ」の道具ではありません。
本当の仕事は、買う瞬間に選択肢へ入ることかもしれません。
では、本当に効くブランドとは何なのか。
また別の回で「思い出しやすさ」と「買いやすさ」の設計について、バイロン・シャープの理論も踏まえながら整理していきます。
買う瞬間に選択肢へ入ることかもしれない。
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