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なぜコカ・コーラとスニッカーズは記憶に残ったのか?―広告の本当の仕事は「説明」ではない

 

売れる前に、思い出されているか——コカ・コーラとスニッカーズに学ぶ広告の本質 | 思考の構造
MARKETING / ADVERTISING
売れる前に、思い出されているか
——コカ・コーラとスニッカーズに学ぶ広告の本質
佐竹 正宏|思考の構造

広告は、商品を説明するものだと思われがちです。

機能、価格、品質——うまく説明すれば売れる
と考えている人は多い。

でも本当に強い広告は、説明を増やすより先に
「その商品を思い出す理由」を作っています。

買う瞬間よりも前に、頭の中で場所を取っておく。
その設計が、長期的に選ばれるブランドを作ります。

今日は、コカ・コーラとスニッカーズという2つの事例から
その構造を整理します。

なぜ名前が入っただけのコーラが大きな話題になったのか。
なぜスニッカーズは「空腹時の自分」という一言で強いブランドになれたのか。
この2つに共通しているものは何か。

今回は、Coca-Cola公式のShare a Cokeに関する資料、IPA(英国の広告効果研究機関)のコカ・コーラケース、そしてCampaignに掲載されたスニッカーズのケースをもとに整理していきます。


1. コカ・コーラはなぜ「共有したくなるブランド」になれたのか

コカ・コーラのShare a Cokeというキャンペーンをご存知でしょうか。

コーラのロゴの代わりに、人の名前をボトルに印刷して販売した施策です。
発想としては、非常にシンプルです。

でも、この単純さが強かった。

このキャンペーンが作ったのは、商品の説明ではありません。
「自分の名前を探したくなる」
「誰かの名前を見つけたら渡したくなる」
という行動の入口です。

自分のために買うだけでなく、誰かを思い浮かべて手に取る理由が生まれた。
写真を撮りたくなることで、SNSで自然に広がっていった。

広告が、会話の入口になっていたのです。

IPAのケースでも、このキャンペーンは認知の拡大だけでなく、ブランドと感情的な場面を結びつけることに成功したと整理されています。

コカ・コーラは「飲料」から「人との共有のきっかけ」に、ブランドの位置を少しずらしました。
商品を売り込んだのではなく、人とつながる場面の中に自社ブランドを入り込ませたのです。

コカ・コーラは「コーラを買う理由」を増やしたのではなく、
「コーラを思い出す場面」を増やした。

コカ・コーラほどの知名度があるブランドでも
思い出される場面を設計し続けています。

強いブランドは、その努力をやめないのです。

2. スニッカーズはなぜ「空腹の時に思い出すブランド」になれたのか

スニッカーズの有名なコピーがあります。

「You're Not You When You're Hungry」
——おなかがすいているとき、あなたはあなたじゃない。

これは商品説明ではありません。
味の説明でも、原料のアピールでも、価格訴求でもない。

代わりに作ったのは、「空腹だと人は本来の自分ではなくなる」という日常感覚とブランドの結びつきです。

Campaignのケースでも、このキャンペーンがなぜ強かったかが整理されています。

空腹でイライラする、判断が雑になる、人間関係が少しギクシャクする
——そういう場面にスニッカーズを結びつけた。

その結果、スニッカーズは「チョコバー市場の一商品」という位置ではなく、
「空腹で自分らしくなくなる時の解決策」という位置を取りました。

人はブランドを辞書のように覚えているわけではありません。
何かの状況、感情、場面の中で思い出します。

スニッカーズは、その思い出されるタイミングそのものを獲得したのです。

スニッカーズは商品を説明したのではなく、
思い出されるタイミングを獲得した。



3. この2つに共通していること

Coca-Cola公式のShare a Coke、IPAのコカ・コーラケース、CampaignのSnickersケース。
これらに共通して見える構造があります。

2つの事例に共通する構造
商品の機能説明を前面に出していない
先に作っているのは、ブランドが頭に入ってくる「入口」
すでに存在している感情や場面に乗っている
コカ・コーラは「誰かに渡したい」、スニッカーズは「空腹で機嫌が悪い」
今すぐ売る訴求だけでなく、思い出され方を設計している
これが広告の長期効果の土台になる

ゼロから感情を作ったのではありません。
もともとそこにあった感情や場面に、ブランドを結びつけた。

だからこそ、何年たっても語られる広告になっているのです。
一時的なセールよりも、ずっと長く効いています。


まとめ
TODAY'S POINT
強い広告は、説明の量ではなく「思い出す入口」を作っている
すでに存在している感情・場面にブランドを結びつける
広告の評価を「見た直後に売れたか」だけで見ると、本当の働きを見誤る
「この商品は、どんな場面で思い出されるべきか」が出発点になる

コカ・コーラもスニッカーズも、売り込みが上手かったというより
思い出される状況をうまく作りました。

自分の発信や商売に置き換えてみてください。

ただ説明を増やしているだけなら、まず考えるべきは
「この商品やサービスは、どんな場面で思い出されるべきか」
かもしれません。

コカ・コーラなら「誰かと共有したいとき」
スニッカーズなら「空腹で自分らしくないとき」

あなたのビジネスには、どんな場面がありますか。

広告の本当の仕事は、その場で説得しきることではない。
後で選ばれるために、先に記憶の中で場所を取ること。
売れる前に、思い出されているか。
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【参考資料】

 

1. The Coca-Cola Company

- Iconic 'Share a Coke' is Back for a New Generation

- Share a Coke の企画意図、名前入り施策、120か国超への展開を確認するための公式ソース

 

2. IPA

- Coca-Cola case study

- Share a Coke を米国に導入した背景、

  若年層との再接続、

  購買・共有を促す設計を確認するためのソース

 

3. Campaign

- Case study: How fame made Snickers' 'You're not you when you're hungry' campaign a success

- Snickers の

  「You're Not You When You're Hungry」

  がなぜ強かったのか、

  初年度の売上増と市場シェア拡大を確認するためのソース

 

4. IPA

- Snickers: You're not you when you're hungry

- Snickers のグローバルキャンペーンの狙いと、

  ブランド想起の設計を補強するためのソース